KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

etc...

エトセトラ

2017.03.08

​ポルトガルの旅もそろそろ終盤である。これまでポルトガルにおける様々な公共交通をご紹介してきたが、満を持して(?)リスボンの路面電車を取り上げる。

X60785.jpg

バイシャ地区を走るリスボン市電
2016.2.13/**

▲リスボン中心部のバイシャ地区を行き交う路面電車

​リスボン市電の存在を知ったのは、初めて海外に行って海外の鉄道に興味を持ち、暇さえあれば適当に海外の鉄道についてあれこれ調べていた時のことだったと思う。YouTubeだったかニコニコ動画だったか、小ぶりな路面電車が市街地の中のどエライ狭いところを走っている動画を見つけ、衝撃を受ける。なんなんだこれは、と。調べてみれば、それはリスボン市電なのだという。こうしてリスボン市電に強く興味を惹かれた私は、いつかこの風景を自分の目で見てみたいと思うようになった。

衝撃の動画に出会ってから早ウン年、リスボン市電に直接触れる機会を得た。もはやポルトガルに来た理由の半分くらいがこのリスボン市電と言ってもいいので、その感動はひとしおである。

​さて、まずは車両について簡単にご紹介しよう。リスボン市電では大きく分けて2種類の車両が走っている。

​Remodelados(改修車)

​リスボンの路面電車と言えば、何と言ってもこのレトロな風貌が特徴的な小型車両である。黄色と白のツートンカラーであるその可愛らしい姿は、市販のガイドブックはもとより当局が発行する観光パンフレットにも主役級として堂々と載せられているほどの存在。市内のおみやげ屋さんに入ればミニチュアモデルがおみやげとして何種類も並んでおり、それは単なる公共交通を超えてもはやリスボンという都市のマスコット的存在になっているように見える。これほどまでの存在になっている路面電車は、世界広しといえどもなかなかないのではなかろうか。

車両は1930年代に作られたものということなのだが、1990年代に制御装置から台車から何から何まで徹底的な機器更新が行なわれており、見た目とは裏腹にリスボン特有の急坂を軽やかに、そして静かに駆け上がっていく。特徴的なのは集電装置で、パンタグラフとポールの2つを装備。これらは路線によって使い分けているようだった。車両自体が小さいので屋根の広さも猫の額ほどだが、そこへパンタグラフやらポールやら方向幕やらをごちゃごちゃと載っけている姿は面白くもある。大規模更新された機器類とは対照的に車体はほぼそのままのようで、古風な外観はもとより車内の木製でぬくもりのある空間も、この車両がこれほどまでに愛されている理由なのだろうと思う。

X60667.jpg

リスボン市電 547
2016.2.13/**

▲リスボン市電の主力車両、​Remodelados。単なる市電という移動手段を超えてリスボンのマスコット的存在。屋根上にはパンタグラフとポールの2種類の集電装置が載る。小さいながら魅力がぎゅっと詰まった車両である
X59450.jpg

リスボン市電 571
2016.2.9/**

▲同じく​Remodelados。こちらはパンタグラフを使って走る姿
X60738.jpg

リスボン市電 564
2016.2.13/**

▲連なって走る​Remodelados。後ろの赤い車両は観光トラム

また、改装車をさらにレトロ調に改造した車両が観光トラムとして営業を行なっている。観光トラムはツアー扱いでの運行になっており、一般の路面電車としての乗車はできないのだが、運行ルートは観光トラムというだけあって市電の各路線の面白いところをかいつまむようにして走っているようだった。もっとも、ほとんどの観光客は有名な28系統に乗ってそれで満足しちゃうらしく、28系統が終始大混雑しているのに対して、観光トラムはガラガラな状態で実に寂しそうに走っているのであった・・・。

​​Artculados(連節車)

1995年に導入された低床の連接車で、10台が在籍。半分がシーメンス製、もう半分がアドトランツ製だそう。市内中心部からテージョ川に沿って西へ向かう15系統の専用車両として走る(というか、それ以外の路線では道が狭くて走れない)。出番は乗客の多い日中時間帯だけらしく、早朝と深夜は車庫に引っ込んでしまう。

VVVFの走行音がすごく特徴的なのである日の晩にそれを録ろうと乗りに行ったら、既に運用を終えていたらしく代わりに前述の改装車が来てくれた(涙)。朝晩だけ3両編成になる地下鉄の件といい、謎の合理性はここでも発揮されているのであった。

X59164.jpg

リスボン市電 564
2016.2.9/**

▲黄色い車体が特徴のArtculados。15系統専用の車両である。15系統はフィゲイラ広場まで走るが、この日はイベントによる交通規制のためカイス・ド・ソドレまでの運行だった

関連記事

ポルトガル周遊の記 16 - リスボン市電あれこれ(路線篇)

前回の記事につづいてリスボン市電をば。今回は路線についてご紹介しよう。​2017年現在、リスボンで運行されている路面電車は12、15、18、25、28の5系統。系統番号の数字が飛び飛びになって...

ポルトガル周遊の記 16 - リスボン市電あれこれ(路線篇)
ポルトガル周遊の記 14 - リスボンのケーブルカー グロリア線

リスボンを走るケーブルカー、ビッカ線に続いてグロリア線をば。リスボンの中心に位置するレスタウラドーレス広場の脇から、丘の上のバイロ・アルト地区へとあがっていくのがグロリア線のケーブルカーである...

ポルトガル周遊の記 14 - リスボンのケーブルカー グロリア線
ポルトガル周遊の記 13 - リスボンのケーブルカー ビッカ線

リスボンを走るケーブルカー、ビッカ線に乗る。ケーブルカーというと山の中を走っていて、山麓から山の中のある程度のところまで運んでくれる楽ちんな乗りものという印象があるが、リスボンのケーブルカーは...

ポルトガル周遊の記 13 - リスボンのケーブルカー ビッカ線
ポルトガル周遊の記 12 - リスボン市バスあれこれ

リスボンの公共交通あれこれ、地下鉄に続いては市バスを取り上げよう。リスボンの市バスはCarrisという公営企業体によって運営されている。車体は同じくCarrisによって運営されている路面電車と...

ポルトガル周遊の記 12 - リスボン市バスあれこれ
ポルトガル周遊の記 11 - アートな世界のリスボン地下鉄

ここからはポルトガルの首都リスボンの公共交通について取り上げていこうと思う。まずは地下鉄をば。リスボン地下鉄は2016年現在、4つの路線を運行している。以前の記事でご紹介したポルトメトロは...

ポルトガル周遊の記 11 - アートな世界のリスボン地下鉄

最新記事

四直珍列車研究 134 - 平日 1681K

京成車の特急泉岳寺行が登場。平日1681Kレは、京成車で運転される特急泉岳寺行である。2023年11月ダイヤ改正で登場した列車となっている。京成車の泉岳寺行は都営浅草線西馬込始発のものは数多く...

四直珍列車研究 134 - 平日 1681K
京急1000形 「京急夏詣号」運転(2024年)

空とあなたと夏詣。京急電鉄では、6月末より「京急夏詣キャンペーン2024」の実施に合わせて、「京急夏詣号」の運転を行っている。「夏詣」キャンペーンは同社が2019年度より毎年実施しているもので...

京急1000形 「京急夏詣号」運転(2024年)
都営浅草線 自動放送どうするの問題を考える

都営浅草線の自動放送どうするの問題を考える。列車内における案内として重要なアナウンス。アナウンスでは列車の種別行先や次駅の案内が行われるが、昨今では自動放送が主流となっており、車掌が自らの肉声で...

都営浅草線 自動放送どうするの問題を考える
船橋新京成バス2741号車 「ふなっしー号」

「ふなっしー」なバスが走る。船橋新京成バス2741号車が特別仕様「ふなっしー号」として走ってる。「ふなっしー」といえば千葉県船橋市を中心に暴れている同市で人気の非公認キャラクターだが、2023年...

船橋新京成バス2741号車 「ふなっしー号」
北総車の京急線内特急運転が復活

約19年ぶりに復活した北総車の京急線内特急運転を見る。京急線に大きな変化をもたらした2022年11月ダイヤ改正。京急自ら「23年ぶりの大改正」としたこのダイヤ改正では、特に日中時間帯の運行...

北総車の京急線内特急運転が復活