KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

Article

記事

2016.05.05

列車でポルトに到着したなら、まずその足で見ておきたいのはポルト旧市街の中心にあるサン・ベント(São Bento)駅である。1900年に建てられたというその駅舎はガイドブックにも載るほどポルトの見どころのひとつで、ここは鉄道好きとして見逃すわけにはいかぬ。

X59771.jpg

ポルト=サン・ベント駅 外観
2016.2.10/**

▲重厚感のあるポルト=サン・ベント駅の外観

外観は重厚感あふれるもので、それももちろん素晴らしいが、特に素晴らしいのは中の空間。壁面がアズレージョと呼ばれるポルトガル伝統のタイルで装飾された空間が広がっている。アズレージョはポルトガルではごく一般的に用いられている建築装飾で、ポルトガルの街を歩いていると小さなものから大きなものまで、簡単なものから豪華絢爛なものまで本当に多種多様なものを見かけることができるが、ここサン・ベント駅ほどの規模と風格を持ったアズレージョは数多くない。サン・ベント駅のアズレージョはジョルジュ・コラソという画家によって1930年に制作されたものだそうで、ポルトガルの歴史が描かれたものになっているんだとか。約2万枚ものタイルによる装飾はまさに圧巻で、ほかのヨーロッパの古い駅では感じられない独特の雰囲気を作り出している。

X59715.jpg

ポルト=サン・ベント駅 駅舎の内部の空間
2016.2.10/**

▲サン・ベント駅、駅舎の内部の空間
X59718.jpg

ポルト=サン・ベント駅 駅舎の内部の空間
2016.2.10/**

▲壁一面に装飾されたアズレージョのタイル

かつてはポルトの中心駅であったであろうその佇まいだが、アルファ・ペンドゥラールやインテル・シダーデスなどの長距離列車はこのサン・ベント駅ではなく、ひとつ隣のポルト=カンパニャン(Campanhã)駅を発着している。サン・ベント駅はルートとしてもポルトガルを南北に縦貫する本線上から外れたいわゆる盲腸線上の終端駅で、ポルトにおける鉄道の玄関口は既にカンパニャン駅に譲っているといった感じ。サン・ベント駅はというと現在はポルト都市圏を走る近郊列車のターミナルとなっていて、この駅を発着するのは主にSiemens製の電車である。ポルトメトロと接続していることもあってこの駅は通勤としての利用が多く、ラッシュ時には大量の通勤客が電車から吐き出されて、駅舎に流れてくる。古い駅舎がまだまだ現役であるという様子を垣間見ることができる。それにしてもこの空間を毎日利用できるなんてそんな贅沢なこともあるまい。うらましいのぅ。

ホームはヨーロッパの終端駅らしくいわゆるくし形の配置で、5面8線。ホームの終端側に駅舎があるという格好。ホームの先はすぐにトンネルとなっており、ポルトがいかに起伏の激しい地形かということがよくわかる。トンネルを抜ければまもなくカンパニャン駅で、この駅間の所要は約5〜6分といった程度。カンパニャン駅発着のアルファ・ペンドゥラールまたはインテル・シダーデスの乗車券ならばその乗車券でカンパニャン駅〜サン・ベント駅間の普通列車にも乗車可能なので、ぜひともこの駅を見学するだけではなく"利用"したいものだ。鉄道の旅に彩りを添えてくれることは間違いなし。

X59725.jpg

ポルト=サン・ベント駅 ホーム
2016.2.10/**

▲くし形のターミナルに列車が並んでいる
X59687.jpg

ポルトガル鉄道3400形電車
2016.2.10/Porto Campanhã

▲ポルト都市圏の近郊列車、Siemens製の3400形電車
X59968.jpg

ポルトガル鉄道3400形電車 車内の様子
2016.2.10/**

▲近郊列車の車内。2+2配置のクロスシートだが、広軌ということもあって横に広い

関連記事

ポルトガル周遊の記 6 - コインブラのトロリーバス

ポルトガルの中部の都市、コインブラをブラブラ・・・(ぉ ポルトガルの中部に位置する都市、コインブラ。丘の上にあるコインブラ大学を中心に発展し、ポルトガル中央部を代表する都市である。コインブラ大学...

ポルトガル周遊の記 6 - コインブラのトロリーバス
ポルトガル周遊の記 5 - 特急「インテル・シダーデス」

ポルトガルその5。再びポルトガル鉄道(CP)の話題に戻って、特急「インテル・シダーデス」(Intercidades)をば。インテル・シダーデスという名称だが、インテルはinterのポルトガル語...

ポルトガル周遊の記 5 - 特急「インテル・シダーデス」
ポルトガル周遊の記 4 - ポルト市電

ポルトガルその4はポルトを走る路面電車、ポルト市電をご紹介。ポルトもかつては市内を路面電車がくまなく走る都市だったようだが、やはりモータリゼーションの波を受けて路線バスへの置換えが進み...

ポルトガル周遊の記 4 - ポルト市電
ポルトガル周遊の記 3 - ポルトメトロのトラム・トレイン

ポルトガルその3はポルトの都市交通、ポルトメトロ(Metro de Porto)をば。ポルトメトロは2004年に開業したポルトの交通システムである。メトロという名前ではあるが、日本語でいう...

ポルトガル周遊の記 3 - ポルトメトロのトラム・トレイン
ポルトガル周遊の記 1 - 特急「アルファ・ペンドゥラール」

2月の上旬にポルトガルに行ってきましたよっ。周遊ってほどではないけれど、ポルトガルの首都リスボンから入ってポルト→コインブラ→リスボン→シントラ(ロカ岬)→リスボンという具合にポルトガル国内を...

ポルトガル周遊の記 1 - 特急「アルファ・ペンドゥラール」

最新記事

2025.03.12

京急600形・2100形 側面の行先表示器をLED化

京急600形と2100形、側面の行先表示器がLEDになる。京急600形と2100形で、側面の行先表示器のLED化が進んでいる。2024年10月下旬にLEDとなった602編成と607編成、2157...

京急600形・2100形 側面の行先表示器をLED化

2025.03.07

京成バス 車両番号の基礎知識 - 分離子会社編

京成バスおよびグループ各社では、車両に対して数字や英字を用いた番号を漏れなく付しており、これを車両番号(社番)として各車両の管理に使用している。当Webサイトでは2017年8月にも「京成バス...

京成バス 車両番号の基礎知識 - 分離子会社編

2025.03.02

京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 下 - 京成立石〜青砥

京成電鉄では、押上線四ツ木〜京成立石〜青砥で実施している連続立体交差事業において、下り線の仮線への切り替えを実施した。切り替えは2024年11月29日の終電後〜翌30日未明に実施され、同日の始発...

京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 下 - 京成立石〜青砥

2025.02.25

京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 上 - 四ツ木〜京成立石

京成電鉄では、押上線四ツ木〜京成立石〜青砥で実施している連続立体交差事業において、下り線の仮線への切り替えを実施した。切り替えは2024年11月29日の終電後〜翌30日未明に実施され、同日の始発...

京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 上 - 四ツ木〜京成立石

2025.02.20

フランス モン・サン・ミッシェルを走る両運バス

モン・サン・ミッシェルで一風変わったバスに出会う。フランス北西部、ノルマンディー地方はサン・マロ湾に浮かぶモン・サン・ミッシェル。周囲約900mの小さな島の上に何世紀にもかかってつくられた修道院...

フランス モン・サン・ミッシェルを走る両運バス