2016.05.27
ポルトガルその3はポルトの都市交通、ポルトメトロ(Metro de Porto)をば。
ポルトメトロは2004年に開業したポルトの交通システムである。メトロという名前ではあるが、日本語でいうところの地下鉄というよりライトレールといったような感じ。ポルトの中心部のごくわずかな区間だけ地下を走るほかは、ほとんど地上を走る。各駅とも比較的簡素なつくりで改札は設けられておらず、地上区間では路面電車のようにして走る区間もあるので、車両も路面電車タイプの低床車両(LRV)が使用されている。ポルトはポルトガル第2の都市ともいえど人口は26万程度でさほど大きくないので、フル規格の地下鉄のようなガッチリとしたものではなく、都市の規模に見合った交通システムと言える。
ポルトメトロで興味深いのは、隣接の都市まで直通している点。都市としてのポルトだけではなく、ポルト都市圏の交通システムとして機能している。こういったメトロと言えば、都市内で完結した路線網となっている場合が多いが、ポルトメトロはポルト都市圏の都市間輸送としての役割も果たしているというわけ。運行系統はA〜Eの5つだが、特にB系統はポルトから30km先のポボア・デ・バルジン(Póvoa de Varzim)という都市まで比較的長い距離を走る。都市間の郊外部で専用軌道による高速運転を行なうことから、通常の路面電車タイプの車両に加えてトラム・トラインという路面電車と通常の鉄道車両を足して割ったようなものが使用されており、車両としても輸送形態に合わせたものが採用されているのも面白い。
ポルトメトロのハイライトは、何と言ってもドン・ルイス1世橋であろう。1886年に完成したドン・ルイス1世橋はドウロ川沿いの傾斜地に広がる旧市街とともにポルトの風景を作り出しており、今やポルトを象徴する橋である。ドン・ルイス1世橋はアーチのたもとにも桁の架かる2層の橋となっているが、その上層部をポルトメトロが走っている。もともとは自動車用だったものをポルトメトロの軌道に転用1)したとのこと。公共交通であるポルトメトロをポルトの象徴であるドン・ルイス1世橋に通すという意味はとても大きいように思われる。ドン・ルイス1世橋とともに写るポルトの風景にはポルトメトロも走っており、古い街並みの中にある新しい動脈としてポルトメトロが写る。ちなみに軌道が走る上層部は歩行者用通路にもなっており、歩行者と公共交通が共存するトランジットモール的な空間になっている。ドン・ルイス1世橋から見るポルトの街並みは絶景なので、高所恐怖症でなければ最高のお散歩コースになることは間違いない。
- 1)道路交通は少し上流に新しく架けた橋で迂回するようにしている。
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