2017.03.08
ポルトガルの旅もそろそろ終盤である。これまでポルトガルにおける様々な公共交通をご紹介してきたが、満を持して(?)リスボンの路面電車を取り上げる。
リスボン市電の存在を知ったのは、初めて海外に行って海外の鉄道に興味を持ち、暇さえあれば適当に海外の鉄道についてあれこれ調べていた時のことだったと思う。YouTubeだったかニコニコ動画だったか、小ぶりな路面電車が市街地の中のどエライ狭いところを走っている動画を見つけ、衝撃を受ける。なんなんだこれは、と。調べてみれば、それはリスボン市電なのだという。こうしてリスボン市電に強く興味を惹かれた私は、いつかこの風景を自分の目で見てみたいと思うようになった。
衝撃の動画に出会ってから早ウン年、リスボン市電に直接触れる機会を得た。もはやポルトガルに来た理由の半分くらいがこのリスボン市電と言ってもいいので、その感動はひとしおである。
さて、まずは車両について簡単にご紹介しよう。リスボン市電では大きく分けて2種類の車両が走っている。
Remodelados(改修車)
リスボンの路面電車と言えば、何と言ってもこのレトロな風貌が特徴的な小型車両である。黄色と白のツートンカラーであるその可愛らしい姿は、市販のガイドブックはもとより当局が発行する観光パンフレットにも主役級として堂々と載せられているほどの存在。市内のおみやげ屋さんに入ればミニチュアモデルがおみやげとして何種類も並んでおり、それは単なる公共交通を超えてもはやリスボンという都市のマスコット的存在になっているように見える。これほどまでの存在になっている路面電車は、世界広しといえどもなかなかないのではなかろうか。
車両は1930年代に作られたものということなのだが、1990年代に制御装置から台車から何から何まで徹底的な機器更新が行われており、見た目とは裏腹にリスボン特有の急坂を軽やかに、そして静かに駆け上がっていく。特徴的なのは集電装置で、パンタグラフとポールの2つを装備。これらは路線によって使い分けているようだった。車両自体が小さいので屋根の広さも猫の額ほどだが、そこへパンタグラフやらポールやら方向幕やらをごちゃごちゃと載っけている姿は面白くもある。大規模更新された機器類とは対照的に車体はほぼそのままのようで、古風な外観はもとより車内の木製でぬくもりのある空間も、この車両がこれほどまでに愛されている理由なのだろうと思う。
また、改装車をさらにレトロ調に改造した車両が観光トラムとして営業を行っている。観光トラムはツアー扱いでの運行になっており、一般の路面電車としての乗車はできないのだが、運行ルートは観光トラムというだけあって市電の各路線の面白いところをかいつまむようにして走っているようだった。もっとも、ほとんどの観光客は有名な28系統に乗ってそれで満足しちゃうらしく、28系統が終始大混雑しているのに対して、観光トラムはガラガラな状態で実に寂しそうに走っているのであった・・・。
Artculados(連節車)
1995年に導入された低床の連接車で、10台が在籍。半分がシーメンス製、もう半分がアドトランツ製だそう。市内中心部からテージョ川に沿って西へ向かう15系統の専用車両として走る(というか、それ以外の路線では道が狭くて走れない)。出番は乗客の多い日中時間帯だけらしく、早朝と深夜は車庫に引っ込んでしまう。
VVVFの走行音がすごく特徴的なのである日の晩にそれを録ろうと乗りに行ったら、既に運用を終えていたらしく代わりに前述の改装車が来てくれた(涙)。朝晩だけ3両編成になる地下鉄の件といい、謎の合理性はここでも発揮されているのであった。
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