2017.05.12
京成バスH504号者は、新習志野高速営業所に所属するリフト付きの高速バス車両である。
一見すると普通の高速バス車両のようだが、乗降側の窓割り(上の写真でちょうどKeiseiと書いてあるあたり)が変則的になっているのが特徴で、このことで一般的な車両とは何かが違うということに気づく。この部分にリフト利用者用の乗降口が設けてあり、車いす利用者はこの部分からリフトを使って乗降する。この床下に車いす用のリフトユニットが格納されており、ドアがワゴン車のスライドドアのように開いた後、リフトが出てきて稼働するという仕組み1)になっている。
前面ならびに側面に大きなステッカーが貼ってあり、本車両がリフト付き車両であることを示している。日野自動車が発売しているセレガのリフト付き観光バスをベースに高速バス仕様にしたものの模様で、型式はQTG-RU1ASCA改。京成バスによれば、千葉県内でリフト付き高速バスの運行は初めてのことになるそうである。
2020年には東京オリンピック・パラリンピックも控えていることから、これを契機としたユニバーサルデザイン化が政府主導で「ユニバーサルデザイン2020」として推進されているところである。その行動計画では、成田空港と羽田空港のバリアフリー化はもちろんのこと、両空港へのアクセスバスのバリアフリー化も盛り込まれた。バス車両のバリアフリー化については、一般路線車ではノンステップ車両がだいぶ浸透してきているが、空港連絡バスに使用されている高速バス車両は構造上の問題もあってバリアフリーに適さない高床式の車両が今も主流である。そこで、国土交通省を主体にリフト付き高速バス導入の実証実験を行うこととし、京成バスと東京空港交通、京浜急行バスの空港連絡路線にてリフト付高速バスの試験的運用が開始された。H504号車はそうした経緯から導入された車両である。
実証運行ということで、このH504号車は成田空港〜海浜幕張駅・幕張メッセ中央を1日に3往復する固定ダイヤにて運行されている2)。ところが、成田空港は第2ターミナルのみの発着。幕張側も海浜幕張駅ののりばがリフト付き車両に対応していないためか、京葉線の高架下に設けた車いすリフト利用者のための海浜幕張駅バス停に別途停車、幕張メッセ中央にも2回立ち寄るというやや苦しいイレギュラーな経路になってしまっている。
さらに、当初は2016年4月に運行開始予定だったものが8月からの運行にずれ込んでおり3)、運行に向けた調整からして難航していたことをうかがわせているのを見るにつけ、そもそもリフト付き高速バスを運行する環境が整っていないことを感じさせる。現状において、リフト付き高速バスを運行させる難しさを見ているかのようだ。もっとも、そうした問題点をあぶり出すことが今回のリフト付き高速バスの実証実験の目的のひとつであろうから、本格運行に移行した際にはここらへんの事柄の解決を含めて、ものごとがよりよい方向へ進んでいくことを期待したいものである。
- 1)丸川五輪相が羽田空港視察 リフト付きバスを試乗(YouTube) - 共同通信社によるニュース動画。動画中に丸川珠代五輪担当大臣が車いすリフトを体験するシーンがある。
- 2)月に1〜2度ほどの頻度で車両点検があり、その際はリフト付きでない一般の高速バス車両が代走する(車両点検日は公式HPで発表されている)。
- 3)2016年3月の時点ではイオンモール幕張新都心への発着が予定されていた。
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