2018.08.31
数々の珍列車を紹介してきたシリーズも今回でめでたく100回。第100回記念スペシャルということで、本当に珍しい不定期列車、S57運行の試運転を取り上げてみよう。

京成3500形 3596編成
2012.11.26/うすい〜佐倉

京成3700形 3738編成
2012.11.26/うすい〜佐倉
- [平日]S57 試運転
- 始発:宗吾参道---- 〜 終着:八千代台----
- ダイヤ:2012.10.26改正
- 備考:不定期列車
S57運行・・・京成線をよく見ている方にとってはお馴染みの番号であるかと思う。全般検査(全検)や重要部検査(重検)に伴う試運転がこの行路にて実施1)されており、Twitterなどでの目撃情報でもよく挙がる、注目度の高い行路だ。以前の記事で、不定期運行を示すSが頭文字となる運行番号のうちS30番台からS40番台にかけては高砂〜宗吾参道間の臨時回送にあらかじめ割り当てられていることをご紹介したが、S40番台からS60番台にかけては宗吾参道を発着する試運転列車として設定されている。S57運行はそのうちの1つとなっており、運転区間は宗吾参道から八千代台までの1往復。昼下がりの八千代台駅1番線に試運転と表示したピカピカな電車が停車していたならば、この列車と思っていただいて間違いない。
そのようなものなので、S57運行には宗吾車両基地にて全検あるいは重検を施工される車両であれば充当される可能性がある。全検・重検を京成に委託している北総車も、京成線内をこのS57運行の試運転で走る姿を見ることができる。このほか芝山鉄道と舞浜リゾートラインの車両も宗吾車両基地で全検・重検を実施しているが、これらは例外。芝山車はこれまでいずれもS57運行ではない行路での試運転となっている。全検あるいは重検に伴う試運転はその車両にとっての自社線内で実施する必要がある2)ようで、芝山鉄道の車両を芝山千代田まで入線させるための措置である。舞浜リゾートラインの車両は・・・これはいちいち説明しなくてもお分かりいただけると思う。

北総7800形 7818編成
2016.11.1/うすい〜佐倉

芝山鉄道3500形 3540編成
2018.3.27/ユーカリが丘〜うすい
よく出場試運転などと言われるが、この試運転自体が全検あるいは重検の工程における最後の仕上げとなり、これに合格して初めて検査の完成(出場)となる。運行にあたっては検査担当の係員が乗車しており、駅間では急制動の試験をするなど、出場に向けた念入りなチェックが行われている様子を見ることができる。したがって、S57運行の試運転で不具合が見つかれば、さらに別の行路にて試運転を追加で実施する場合がある。また、AE形は成田スカイアクセス線内で160km/h運転を行うゆえにS57運行の試運転だけでは出場とならず、後日に成田スカイアクセス線内でも試運転(AE47運行)を実施している。
なお、全検あるいは重検に伴う試運転は必ずしもS57運行で実施というわけではなく、他の不定期列車と運転日が重なっているという場合には別の行路で試運転を実施することがある。また、2011年3月に発生した東日本大震災では、S57運行の運転区間内であるユーカリが丘〜うすい間の軌道が深刻なダメージを受けたため、しばらくの間、試運転を佐倉〜東成田間という全くの別行路で実施していたことがあった。

京成3600形 3678編成
2016.10.13/ユーカリが丘〜うすい
以上、S57運行がどのような試運転かを長年の観察に基づいて記してみたが、細かいことを抜きにしても検査上がりたてのピカピカな車両3)を見るのはやはり気持ちが良い。その仕上がりからは宗吾車両基地の係員による懇切丁寧な作業の様子が想像できるというものだ。一方、車両の検査は法令等に則ったものである。そのため、S57運行それ自体は不定期列車だが、長い目で見れば定期的に運転される性格のものとも解釈できる。そういった意味では、将来的に試運転の列車が走らなくなるということはありえない。ダイヤ改正で消滅する危険性を孕んでいる1日数本の定期列車の方がよほどレアになる可能性がある。
- 1)S57運行は平日ダイヤの番号。土休日ダイヤの日に実施した場合、同様の行路は現行ダイヤではS53運行として運転される。
- 2)これは北総車も同様だが、後日に北総線内の試運転も実施している。
- 3)2014年度より一部の車両を対象に新重検という新しい検査が実施されているが、この場合はあまりピカピカではない。
関連記事
四直珍列車研究 99 - 平日 694K
押上線を走る6両編成が3年ぶりに復活。平日694Kレは平日の早朝に運転される普通押上行である。この列車の最大の特徴は6両編成という点で、現行ダイヤでは押上線を走る6両編成はこの押上行とこの列車の...
四直珍列車研究 98 - 平日 1400T
都営浅草線の大門〜泉岳寺間の開通からまもなく50年。すなわち、京成電鉄〜東京都交通局〜京急電鉄の3者直通運転が50周年を迎えようとしている。・・・というわけで、今回は京成線〜都営浅草線〜京急線を...
四直珍列車研究 97 - 平日 2472H・土休日 2462H
平日2472Hレ、土休日2462Hレは京急車の普通浅草橋行である。以前の記事でもご紹介したように、京成押上線の上り終電は普通浅草橋行というこの列車でしか見られない珍列車として運行されている...
四直珍列車研究 96 - 平日 853
平日853レは4両編成で運転される普通成田行である。たびたび話題にしているように、京成電鉄ではここ数年で4両編成の列車の削減を行っている。特に2014年11月ダイヤ改正と2016年11月ダイヤ...
四直珍列車研究 95 - 平日 2370H
平日2370Hレは成田スカイアクセス線上り最終のアクセス特急金沢文庫行である。2017年10月28日に実施された京成線のダイヤ改正は、成田空港アクセスの需要増に対応して、同空港への更なる利便性向上...
最新記事
2025.03.12
京急600形・2100形 側面の行先表示器をLED化
京急600形と2100形、側面の行先表示器がLEDになる。京急600形と2100形で、側面の行先表示器のLED化が進んでいる。2024年10月下旬にLEDとなった602編成と607編成、2157...
2025.03.07
京成バス 車両番号の基礎知識 - 分離子会社編
京成バスおよびグループ各社では、車両に対して数字や英字を用いた番号を漏れなく付しており、これを車両番号(社番)として各車両の管理に使用している。当Webサイトでは2017年8月にも「京成バス...
- 京成バス
- タグはありません
2025.03.02
京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 下 - 京成立石〜青砥
京成電鉄では、押上線四ツ木〜京成立石〜青砥で実施している連続立体交差事業において、下り線の仮線への切り替えを実施した。切り替えは2024年11月29日の終電後〜翌30日未明に実施され、同日の始発...
2025.02.25
京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 上 - 四ツ木〜京成立石
京成電鉄では、押上線四ツ木〜京成立石〜青砥で実施している連続立体交差事業において、下り線の仮線への切り替えを実施した。切り替えは2024年11月29日の終電後〜翌30日未明に実施され、同日の始発...
2025.02.20
フランス モン・サン・ミッシェルを走る両運バス
モン・サン・ミッシェルで一風変わったバスに出会う。フランス北西部、ノルマンディー地方はサン・マロ湾に浮かぶモン・サン・ミッシェル。周囲約900mの小さな島の上に何世紀にもかかってつくられた修道院...