KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

Article

記事

2018.04.16

タイ国鉄ナムトック支線をナムトックまで乗り通し、カンチャナブリーまで戻ってきた。カンチャナブリーの1つ手前、クウェー川鉄橋駅で列車を降りる。

D27598.jpg

タイ国鉄 クウェー川鉄橋
2016.10.23/**

▲映画『戦場にかける橋』のモデルとなったクウェー川鉄橋。写真の様子だと戦争の遺構を活用した遊歩道にしか見えないが、れっきとしたタイ国鉄の現役の線路である

泰緬鉄道のハイライトとも言えるのが、タイ国鉄ナムトック支線のクウェー川鉄橋である。映画『戦場にかける橋』がまさにこの橋というわけなのだ。そして、同作の成功は、この地をタイを代表する観光地にさせた。バンコクからほどよい距離に位置しているということもあって、外国人の姿も多い。橋のたもとにはその名もクウェー川鉄橋駅が設けられ、観光の便に供している。ちなみに、橋の架かるクウェー川はもともとメークロン川といっていたそうだが、映画の劇中に出てきた川の名前に合わせて、現物の川を改称してしまったのだから驚きだ。

泰緬鉄道そのものがそうであるように、今日に残るタイ国鉄のクウェー川鉄橋も第二次世界大戦中に旧日本軍によって建設されたもので、その完成は1944年ということである。橋はトラス橋となっているが、橋の中央部、2スパンほどでトラスの形状が異なっている部分が見られる。これは戦時中の爆撃により破壊された部分で、戦後になって日本の賠償により再建されたものだそう。曲線を描いたトラスの方がオリジナルである。

X62984.jpg

タイ国鉄 クウェー川鉄橋
2016.10.23/**

▲橋の上の様子。人々は散策したり写真を撮ったり、観光地らしい風景が展開している。線路の両側に見えるグレーの板は観光客のために設置されたもの

さて、そのクウェー川鉄橋だが、対岸まで歩いて渡ることができる。もちろんそれはタイ国鉄の現役の線路のはずなのだが、ここらへんがタイという国の大らかさなのであろう。しかし、鉄橋は鉄橋である。当初、観光客が誤って鉄橋から川に転落するという事故が後を絶たなかったそうなのである。そうなれば、関係者以外の鉄橋への立入りが禁止されそうなところだが、当局が採った対策とは鉄橋に板を敷いて歩きやすくするというもの。さすがはマイペンライの精神を持つタイである。列車がきても轢かれなければマイペンライ〜。

観光地なので、人々の笑い声や笑顔であふれている。ただ、やはりここは戦争の遺構なのである。橋の脇に飾られている爆弾のオブジェや、Death Railwayの文字1)が載る案内板を見てしまうと思いはなかなか複雑だ。この地に訪れたことを素直に楽しんでよいものなのか。しかし、少なくとも第二次世界大戦中の物資補給のために建設された鉄道にとって、こういった現状が救いになっていることは間違いないはずである。

D27582.jpg

タイ国鉄 クウェー川鉄橋
2016.10.23/**

▲列車がやってきた。列車は橋の手前で一旦停止の後、タイ国鉄の職員の誘導により橋に進入する
X62991.jpg

タイ国鉄 クウェー川鉄橋を行く列車
2016.10.23/**

▲列車の通過はこんな感じ。観光客スレスレ

そうこうしているうちに列車がやってきた。バンコク13時55分発ナムトック行の259レである。はてさて、橋の上でウロウロしている観光客をどうさせるのかなと思いきや、そのまま列車を通すようである。

列車は橋の手前で一旦停止。タイ国鉄の職員の誘導によって橋に進入する。橋の上は最徐行で通過。最徐行での通貨は橋の上にいる観光客の安全確保のためとみられるが、列車の乗客にしてもゆっくりと風景が見られるわけだから丁度よいのだろう。

クウェー川鉄橋を渡る列車の姿を見届けて、この日に予定していた行程は終了。泰緬鉄道にどっぷりと浸かった1日が終わったのであった。ソンテウでカンチャナブリー市街まで移動し、都市間バスでバンコクに戻った。

(完)

  • 1)泰緬鉄道は英語でDeath Railway(死の鉄道)と表記されることがある。

関連記事

タイ国鉄 泰緬鉄道の旅 3 - ナムトック支線を行く

泰緬鉄道を訪ねてみようってことでバンコクからの1dayトリップ。バンコクのトンブリー駅から客車に揺られて3時間弱、泰緬鉄道観光の要所カンチャナブリーに着いた。ここからさらに4時間ほど列車に乗り...

タイ国鉄 泰緬鉄道の旅 3 - ナムトック支線を行く
タイ国鉄 泰緬鉄道の旅 2 - ナムトック行鈍行257レ

さて、泰緬鉄道を訪ねてみようってことでバンコクからの1dayトリップ。バンコク=トンブリー駅からナムトック行の鈍行列車257レに乗る。列車は機関車+客車6両という構成。最後尾の1両が業務用を...

タイ国鉄 泰緬鉄道の旅 2 - ナムトック行鈍行257レ
タイ国鉄 泰緬鉄道の旅 1 - 早朝のバンコク=トンブリー駅

タイ国鉄の列車に乗って1dayトリップ。2015年2月にタイを訪れた時はメークローン線の線路市場を見に行ったけど、今回はさらに足を延ばして泰緬鉄道を訪ねてみた。泰緬鉄道とは、字のごとくタイと...

タイ国鉄 泰緬鉄道の旅 1 - 早朝のバンコク=トンブリー駅
タイ バンコク交通見聞 2016年秋 6 - 14系・24系改造の豪華車両

バンコクのフアランポーン駅。14系・24系客車が留置されているホームにてさらに歩を進めると、なにやら凄い雰囲気の客車がいるではないかっ。14系・24系を改造した豪華車両である。JR西日本より...

タイ バンコク交通見聞 2016年秋 6 - 14系・24系改造の豪華車両
タイ バンコク交通見聞 2016年秋 5 - タイ国鉄の14系・24系

ところ変わってフアランポーン駅である。今回はホテルがフアランポーン駅の近くだったもんで、これ幸いにと駅の様子をちょくちょくと見に行くことができた。前回の記事にてバンスー新ターミナルをご紹介したが...

タイ バンコク交通見聞 2016年秋 5 - タイ国鉄の14系・24系

最新記事

2025.03.12

京急600形・2100形 側面の行先表示器をLED化

京急600形と2100形、側面の行先表示器がLEDになる。京急600形と2100形で、側面の行先表示器のLED化が進んでいる。2024年10月下旬にLEDとなった602編成と607編成、2157...

京急600形・2100形 側面の行先表示器をLED化

2025.03.07

京成バス 車両番号の基礎知識 - 分離子会社編

京成バスおよびグループ各社では、車両に対して数字や英字を用いた番号を漏れなく付しており、これを車両番号(社番)として各車両の管理に使用している。当Webサイトでは2017年8月にも「京成バス...

京成バス 車両番号の基礎知識 - 分離子会社編

2025.03.02

京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 下 - 京成立石〜青砥

京成電鉄では、押上線四ツ木〜京成立石〜青砥で実施している連続立体交差事業において、下り線の仮線への切り替えを実施した。切り替えは2024年11月29日の終電後〜翌30日未明に実施され、同日の始発...

京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 下 - 京成立石〜青砥

2025.02.25

京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 上 - 四ツ木〜京成立石

京成電鉄では、押上線四ツ木〜京成立石〜青砥で実施している連続立体交差事業において、下り線の仮線への切り替えを実施した。切り替えは2024年11月29日の終電後〜翌30日未明に実施され、同日の始発...

京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 上 - 四ツ木〜京成立石

2025.02.20

フランス モン・サン・ミッシェルを走る両運バス

モン・サン・ミッシェルで一風変わったバスに出会う。フランス北西部、ノルマンディー地方はサン・マロ湾に浮かぶモン・サン・ミッシェル。周囲約900mの小さな島の上に何世紀にもかかってつくられた修道院...

フランス モン・サン・ミッシェルを走る両運バス