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2022.05.05

2002年4月15日、ある車両がデビューした。その名は1000形。それから20年が経つが、1000形は驚くべきことにいまだ導入が続けられている。そんな1000形という車両に敬意を表して、1000形の20年の歩みを簡単に振り返ってみよう。その1はこちら

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京急1000形 1113編成
2020.10.2/平和島

▲2100形に続くアルミ車として登場した1000形は、2006年度末に導入された6次車から一転してステンレス車となった。海外製品を積極的に採用していた床下の機器類も、国産メーカー製中心に方針が転換されている
方針一転、ステンレス車が登場

前回の記事では、2001年度の1000形登場から2006年度に5次車16両が導入されるまでを振り返った。24両の新造を予定していた2006年度は、まず16両が夏までに営業運転を開始、残り8両を待つばかりであった。ところが、この8両についてなんとも不穏な空気が流れ始める。どうやらステンレス車になるらしい、と。そして、それは現実のものとなってしまった。年度末に差し迫った2007年3月13日の終電後、6次車1073編成が京急初のステンレス車として東急車輛から姿を現したのである1)

ついにこの時が来てしまったか、と誰しもが思ったと思う。あれだけ頑なに車体を塗装した車両を導入し続けてきた京急が、ステンレス車を導入したのはまさに事件であった。ステンレス車を採用するに至ったのは、車両メーカーとの兼ね合い、特にステンレス車の製造を得意とする東急車輛との取引においてアルミ車を発注する合理性は低く、コストの面でもステンレス車の方が有利という事情があったようだ2)。ステンレスの車体はJR東日本E231系をベースとしたものとなるが、外装フィルムの貼り方を工夫して従来の京急電車のイメージに近づけている。

合わせて、床下の機器類も一新。2100形からの海外製品を積極的に採用するという方針は一転、国産メーカー中心に戻った。制御装置は8両編成が三菱電機製の、2008年度に登場する4両編成が東洋電機製のIGBT-VVVFインバーターである。電動車も600形以来のMM'ユニット方式に戻り、コテコテ仕様だったアルミ車に対してまあなんというか普通の電車になった。唯一、台車だけはアルミ車と同じ円筒案内式軸箱支持のTH2100系を引き続き採用、軽やかな車体に似つかわしくない、やけにゴツい台車を履く。

何より困惑したのはその車両番号であった。車体が異なれば床下の機器類も大きく異なる、全く別物といっていい2種類の車両が同じ1000形を名乗るどころか連続した番号なのだから。もちろん中の人がそれでいいのなら問題ないのだろうけど、しかしいったい「形」の概念とは・・・。趣味的にはモニョる。

とは言え、車両としての完成度は高かったのだと思う。ステンレス車になってから大きな仕様の変更なく導入が続けられたのがその証左となろう。仕様について試行錯誤が続いたアルミ車とは対照的である。2011年度には1000形初となる6両固定編成1300番台が加わり、1000形ステンレス車は順調に勢力を拡大。2010年度に先代の1000形が全廃されると、その後は800形や2000形も置き換えていった。

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京急1000形 1457編成+1465編成
2020.2.2/金沢八景

▲2008年度導入の8次車からステンレスの4両編成も登場。4両編成ももちろんアルミ車の続番である。4両編成はMM'ユニット方式と先頭M台車の制約との兼ね合いから、この世代の電車にしては異例の4M0T全M編成となった。写真は4両編成を2本繋いだ8両編成でエアポート急行として走る場面だが、ラッシュ時には3本繋いだ12M0Tという暴力的な編成が組まれることもある
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京急1000形 1301編成
2018.8.14/立会川

▲2011年度より登場した1300番台6両編成。4両編成の中間にT車2両を増やした格好の4M2T編成で、したがって制御装置は4両編成と同じ東洋電機製IGBT-VVVFインバーターである。運用の中で増解結を行わないことから電気連結器が省略されているのが特徴
前面貫通型の1800番台が登場

前述のように安定して製造が続けられていた1000形ステンレス車だが、2015年度に大きな動きがあった。この年度に15次車として導入した6両編成2本と4両編成2本のうち、6両編成1本と4両編成について大きな仕様の変更を実施。まず、6両編成のうち1本(1367編成)は東芝製4in1VVVFインバーター+全閉型永久磁石同期電動機(PMSM)が採用され、他の編成とは一線を画す仕様となった。

そして、人々を大きく驚かせたのが4両編成である。この年度に5年ぶりの導入となった4両編成は、前面を貫通型とし、4+4両編成を組んだ時に貫通幌を取り付けて編成間の移動ができる仕様に変更した1800番台となった。車体側面にも変化が生じ、外装フィルムをほぼ全面ラッピングのような格好で貼り付けてアルミ車のような従来の赤い京急電車のイメージに近づけた。床下機器についてはほとんど従来通りで目新しさはなかったが、デザインが一新されたことで久々に新形式の新型車両が登場したかのようなお祭り騒ぎになった。

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京急1000形 1805編成
2018.7.1/大森海岸

▲前面を貫通型にするなどデザインを一新して登場した1800番台。貫通幌を繋いだ4+4編成で他社局線への乗入れを可能としているが、実際にはほとんど自社線内で運用されている
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京急1000形 1801編成
2016.6.28/実籾〜八千代台

▲快速西馬込行として京成本線を走る1800番台。導入初期にわずか半月だけ行われた直通運転の中でも京成本線を走ったのはこの日だけ。1800番台を直通先で再び見られる日はやってくるだろうか

1800番台は8両編成として他社局線への乗入れが可能という触れ込みだったが、実際に直通運用に入ったのは2016年6月中旬から7月上旬までのわずかな期間だけ。あとは専ら4両編成として動いている。貫通幌を繋いで8両編成となるのは車両運用全体の中で8両編成が不足した時と思われるが、特にそういったことは起きていないということなのだろう。京成側に住む私としては、もうちっとこっちに来てくれると嬉しい。

1800番台は翌2016年度にも1本が導入されるが、今のところこれ以降の増備はなく1000形の中でも3本だけという少数派になっている。

(つづく)

  • 1)翌14日に京急電鉄より公式発表。ステンレス車はまさに突然出てきたのである。なお、東急車輛は現・総合車両製作所(J-TREC)横浜事業所。
  • 2)鉄道ジャーナル2018年5月号
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