KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

Article

記事

2016.07.10

ポルトガルその5。再びポルトガル鉄道(CP)の話題に戻って、特急「インテル・シダーデス」(Intercidades)をば。

X60599.jpg

ポルトガル鉄道5600形電気機関車+客車4両
2016.2.13/Lisboa-Oriente

▲Siemens製の5600形電気機関車が牽引する特急「インテル・シダーデス」。ポルトガル鉄道の客車はステンレス製なのが印象的
X60572.jpg

ポルトガル鉄道2240形電車
2016.2.13/Lisboa-Oriente

▲電車タイプのインテル・シダーデスも走る。2240形という車両が使われているが、これは都市間快速列車用からの改造車ということで評判はあまりよくないらしい

インテル・シダーデスという名称だが、インテルはinterのポルトガル語読み、cidadesは同じくポルトガル語でcityという意味なので、要するにポルトガル鉄道におけるインターシティ(IC)である。インテル・シダーデスはアルファ・ペンドゥラール(Alfa Pendular)と同じようにリスボン〜ポルト間を中心に走る優等列車。アルファ・ペンドゥラールとの違いは、停車駅がアルファ・ペンドゥラールより多いほか、速度もアルファ・ペンドゥラールの最高速度220km/hほどは出せないので、アルファ・ペンドゥラールを"特急"と位置づけるならインテル・シダーデスは"準特急"といった感じ1)。アルファ・ペンドゥラールの走らない支線区間に列車の設定があるのも特徴で、オーストリア鉄道のrailjetに対するICのように、インテル・シダーデスはアルファ・ペンドゥラールを補完する役割を果たしていると言える。

リスボン→ポルトの移動ではアルファ・ペンドゥラールに乗ったので、インテル・シダーデスにも乗ってみようということになった。途中、コインブラという街に寄り道をしてリスボンへ戻るという行程である。リスボン〜ポルト間を走るインテル・シダーデスはいわゆる客車列車となっており、電気機関車が客車を引っ張って走るといういかにもインターシティらしい列車の組成。私としては、客車列車は2013年にバルセロナに行った時も翌2014年にバンコクに行った時も乗り逃していたので、ようやく乗ることが叶った。電車タイプの車両を使用したインテル・シダーデスも走っており、それに当たったら嫌だなと思っていたが、電車タイプのものは主に支線方面で使われているとのこと。

客車列車のインテル・シダーデスは概ね機関車+客車4両ないし6両という編成となっており、編成中の1両は必ず1等車、もう1両は1等車とビュッフェの合造車が連結されるという車両の構成。その他は2等車である。バカンスシーズンなどは混雑緩和のため増結することもあるようで、このへんのやりくりは客車列車という強みを活かしている。インターシティのような特急列車だと客室はコンパートメントを想像するが、インテル・シダーデスの客車はアルファ・ペンドゥラールと同じく集団見合式で2+2で4列の座席が並んでいる。(1等車は1+2の3列)。座席は回転もリクライニングもしない仕様で、ここらへんはアルファ・ペンドゥラールと同じ。

X60272.jpg

特急「インテル・シダーデス」 客車内の様子
2016.2.11/**

▲客室内の様子。ポルトガル鉄道のコーポレートカラーである緑色にまとめられている
P13510.jpg

ポルトガル鉄道 乗車券

▲チケットはレシートのようなものが発券される

さて、せっかく乗ることができた客車列車のインテル・シダーデスだが、乗った時間帯があまりよくなかった。スケジュールの都合で夜間の乗車になってしまったのだが、どうも窓ガラスが透過率の低い極悪フルスモーク仕様のようで、外の景色が全く見えん! 外の風景を見ようにも窓ガラスには自分の汚い顔が反射して映るのみ。こんなとこまで来てそんなもん見たくないんじゃああ〜〜。日本とは段違いに都市と農村がはっきり分かれているポルトガルで夜の車窓を楽しもうという方が無茶と言われればそうなのだが、夜にだって客車の規則正しいジョイント音が響く中にときどき小さな明かりが窓の外を流れ行くという旅情がそれなりにあるわけで・・・。ということでせっかく客車列車に乗れたのはいいが、おかげさまでだいぶ退屈な移動となってしまった。

  • 1)ポルトガル鉄道の時刻表等では、アルファ・ペンドゥラールは「AP」、インテル・シダーデスは「IC」と案内される。

関連記事

ポルトガル周遊の記 6 - コインブラのトロリーバス

ポルトガルの中部の都市、コインブラをブラブラ・・・(ぉ ポルトガルの中部に位置する都市、コインブラ。丘の上にあるコインブラ大学を中心に発展し、ポルトガル中央部を代表する都市である。コインブラ大学...

ポルトガル周遊の記 6 - コインブラのトロリーバス
ポルトガル周遊の記 4 - ポルト市電

ポルトガルその4はポルトを走る路面電車、ポルト市電をご紹介。ポルトもかつては市内を路面電車がくまなく走る都市だったようだが、やはりモータリゼーションの波を受けて路線バスへの置換えが進み...

ポルトガル周遊の記 4 - ポルト市電
ポルトガル周遊の記 3 - ポルトメトロのトラム・トレイン

ポルトガルその3はポルトの都市交通、ポルトメトロ(Metro de Porto)をば。ポルトメトロは2004年に開業したポルトの交通システムである。メトロという名前ではあるが、日本語でいう...

ポルトガル周遊の記 3 - ポルトメトロのトラム・トレイン
ポルトガル周遊の記 2 - ポルト=サン・ベント駅

列車でポルトに到着したなら、まずその足で見ておきたいのはポルト旧市街の中心にあるサン・ベント(São Bento)駅である。1900年に建てられたというその駅舎はガイドブックにも載るほどポルトの...

ポルトガル周遊の記 2 - ポルト=サン・ベント駅
ポルトガル周遊の記 1 - 特急「アルファ・ペンドゥラール」

2月の上旬にポルトガルに行ってきましたよっ。周遊ってほどではないけれど、ポルトガルの首都リスボンから入ってポルト→コインブラ→リスボン→シントラ(ロカ岬)→リスボンという具合にポルトガル国内を...

ポルトガル周遊の記 1 - 特急「アルファ・ペンドゥラール」

最新記事

北総7500形 『鉄道むすめ』コラボヘッドマークを掲出

2人の「まきの」がコラボレーション。北総鉄道では、11月中旬から12月上旬にかけて、7500形7503編成において『鉄道むすめ』ヘッドマークの掲出を実施した。伊豆箱根鉄道とのコラボレーション企画...

北総7500形 『鉄道むすめ』コラボヘッドマークを掲出
東洋バス路線図 2024年12月1日版

当Webサイトでは2024年5月に「東洋バス路線図2024年5月1日版」を公開していたところであるが、本稿において約7ヶ月ぶりとなる改訂版を発行する。東洋バスでは12月1日に路線の改廃を含む...

東洋バス路線図 2024年12月1日版
北総線 西白井駅で『ウマ娘 プリティーダービー』特別装飾を実施

「ウマ娘」たちが北総線西白井駅を駆ける。北総鉄道では、10月中旬より西白井駅において『ウマ娘 プリティーダービー(以下、ウマ娘)』の特別装飾を実施している。『ウマ娘』とは、株式会社Cygames...

北総線 西白井駅で『ウマ娘 プリティーダービー』特別装飾を実施
「都営フェスタ2024 in浅草線」開催

5年ぶりの祭典。11月30日、東京都交通局馬込車両検修場で車両基地公開イベント「都営フェスタ2024 in浅草線」が開催された。三田線の志村車両検修場と交互で概ね2年に1度に開催されるイベント...

「都営フェスタ2024 in浅草線」開催
京成電鉄 モーニングライナー・イブニングライナーの特急料金を改定

京成線、モーニングライナーとイブニングライナーを実質値上げ。11月23日、京成電鉄では京成本線で運行している座席指定制の特急列車モーニングライナーとイブニングライナーの特急料金の改定を実施した...

京成電鉄 モーニングライナー・イブニングライナーの特急料金を改定