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エトセトラ

2022.04.15

2002年4月15日、ある車両がデビューした。その名は1000形。それから20年が経つが、1000形は驚くべきことにいまだ導入が続けられている。そんな1000形という車両に敬意を表して、1000形の20年の歩みを簡単に振り返ってみよう。

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京急1000形 1009編成
2007.6.14/青物横丁

▲2002年4月にデビューした京急1000形。デビューからしばらく先代の1000形と併存したことから今でも「新1000形」などと称される(※当Webサイトでも当初は「新1000形」としていましたが、2021年5月の1890番台デビューをもって「1000形」と表記するよう改めました)
2002年4月、2代目1000形がデビュー

京急1000形がデビューしたのは2002年のこと。まず、1次車として2001年度導入分の8両編成1本が3月の試乗会を経て4月15日にデビュー、追って2002年度導入の8両編成2本・4両編成2本も5月ごろより順次営業運転を開始した。番号は8両編成と4両編成で区分され、前者が1001〜、後者が1401〜である。他社線への直通運転にも対応した汎用の車両として導入された1000形の使命は、当時まだまだ数多く走っていた先代の1000形を置換えること。奇しくも新たなる1000形で旧い1000形を置換えるという構図ができあがった。

なんと言っても「1000形」である。1000形と言えば、やはり1958年から20年間にわたり全356両が導入された偉大な先代の存在がある。この1000形の2代目を襲名することの重みたるや、生半可なものではない。結果的には先代を(少なくとも数の上では)超えることになるが、はたして新しい1000形は先代にどれくらい近づけるか期待と不安が混ざったデビューであった。

編成は600形4次車で編み出されたMT比1:1の設計思想が引き続き反映され、8両編成が4M4T、4両編成が2M2Tの組成とされた。機器類は2100形と同じく外国製のものを中心に採用している。言ってしまえば1000形は2100形の通勤型バージョンなのだが、2100形で聞かれるシーメンスVVVFの音階調のメロディサウンドが都営浅草線や京成線などの直通先でも堪能できるようになったのは嬉しかった。1000形では2100形との加速度の違いから「ドレミファ・・・」の後に続く部分がより多く転調し、かなり賑やかなサウンドを奏でた。

1次車の特徴としては、8両編成1本と4両編成1本をそれぞれ分割し、3M3Tの6両編成2本に組み換えられるよう考慮されていたことが挙げられる。実際にこの通りに編成が組み換えられることはなかったが、特に4両編成において2次車以降と異なるパンタグラフの配置にその名残をとどめている。また、当時1次車に乗られた方は憶えておられるかと思うが、特に高速走行時において悲鳴のような甲高いモーター音を立てていた。ギア回りか駆動装置あたりが原因だったかと思うが、とにかく派手な音だったので、1次車だけは音で簡単に聞き分けることができた(※この音は数年で改善)。

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京急1000形 1401編成
2005.2.17/杉 田

▲4両編成のトップナンバー、1401編成。1次車は編成組み換えを考慮した仕様のため、パンタグラフの配置が2次車以降と異なる。写真はLED式の行先表示器を試験搭載していた頃の1401編成で、わずか4ヶ月間のみ見られた日本語に英語を併記した表示の姿。デハ1401については制御装置のデータ取りにも使用され、一時的にIGBT-VVVFインバーターに換装された

当初の1000形は仕様が安定しなかったのは周知の事実であろう。翌2003年度に導入された2次車(8両編成2本・4両編成2本)でさっそく仕様が変更され、編成組み換えを考慮しない純粋な8両固定・4両固定編成になった。

車体にも手が加えられたが、その特徴は何と言っても側面ドア間における大きな窓! 幅2,365mm×高さ920mmの複層ガラスを使用したクソデカ固定窓は、通勤型車両ではあまり類を見ないものである。車内側のカーテンの大きさはもはやギャグかと思うほど。設計において車体側面でツライチになるように処理された大型のガラスは、濃いめのスモークガラスの採用でより美しく仕上がっている。個人的に2次車が1000形の中ではいちばん好きだ。

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京急1000形 1025編成
2011.9.15/花月園前

▲2003年7月に導入された2次車1413編成。仕様変更に伴い、4両編成はパンタグラフの配置も変わった
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京急1000形 1025編成
2004.11.22/平和島

▲2次車で思い出深いのは、2004年12月から翌年3月まで1025編成と1033編成で実施された「羽田空港第2ターミナル開業記念」のラッピング電車。青い京急は強烈だったが、それはそれで似合っていた。後に登場する「KEIKYU BLUE SKY TRAIN」の元祖と言える。なお、現在も使用されている白地の英字入り方向幕は2次車より採用。当初のものは現在より字が細いという特徴がある
IGBT-VVVFインバーターの採用、6M2T・3M1T化

2004年度導入の3次車(8両編成2本・4両編成2本)で、さらに大きな仕様の変化が起きる。まず、VVVFインバーターの素子がGTOからIGBTとなり、独特の音階調に代わって悲鳴と称されるこれまた独特の磁励音を発するようになった。確かにこの頃は既にIGBT-VVVFインバーターが主流となっており、京急はこの点で少し出遅れていたが、1000形3次車でようやく他社に追いついた。

合わせて、編成内の電動車を増やして8両編成は6M2T、4両編成は3M1T化。この変更は特に降雨時における空転対策で乗り心地の改善と言われているが、600形4次車から続いていたMT比1:1の設計思想はここで終わりを迎えた。一方、面白いのはその組成。日本の電車においてはパンタグラフが載っている車両が電動車というのが相場だが、1000形3次車ではパンタグラフ搭載の車両「以外」が全て電動車という奇妙な逆転現象が起きている。

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京急1000形 1057編成
2021.1.20/西白井〜白井

▲2014年4月より特別塗装車「KEIKYU YELLOW HAPPY TRAIN」になっている4次車1057編成。もとは西武鉄道とのコラボ企画で実施されたものだが、現在も黄色い姿で運転中

続く2005年度の4次車(8両編成1本・4両編成4本)と2006年度の5次車(8両編成1本・4両編成2本)は、行先表示器がLED式になったほかはほぼほぼ3次車の仕様のまま導入されている。登場からやや迷走気味だった1000形もようやく仕様が安定し、この感じで導入が続いていくものと思われた矢先、2006年度末になって沿線を震撼させる衝撃のできごとが起きる。

(つづく)

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