KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

etc...

エトセトラ

2024.02.24

京急線で自動放送始まる。

D35486.jpg

京急1000形 1145編成
2020.11.4/新馬場

▲11月ダイヤ改正より自動放送を導入した京急電鉄。同社は広報などで乗務員の肉声での案内に対するこだわりを見せていたが、方針が変わったようだ

京急電鉄では、2023年11月ダイヤ改正より列車内における自動放送の使用を開始した。対象となるのは、他社局線からの直通車両を含む京急線を走る全ての列車。日本語のほかに英語でのアナウンス(一部、中国語と韓国語)を行っており、羽田空港アクセスの一翼を担う鉄道事業者にふさわしい内容に仕上がっている。従来、京急では車載の簡易型自動放送装置など一部を除いて乗務員の肉声による放送に対するこだわりを見せていたが、さすがに時代には逆らえなくなったようだ。

自動放送はタブレット端末(iPad)を活用するものを採用。京成線で導入された自動放送と同じく、iPadにインストールされた近鉄車両エンジニアリング製の専用アプリが音源として使用されている1)。タブレットから出力された音声を車両に設置された接続箱より車両側の放送回路に乗せて放送を行う仕組みで、放送のタイミングは乗務員がタブレットをポチポチして手動で行っている。

A33493.jpg

京急電鉄 乗務員用タブレット端末
2022.2.14/**

▲自動放送用に使用されるタブレット端末(iPad)。乗務員が画面上より放送を選択し、それぞれのタイミングで車内に流している

自動放送の声は、日本語を中矢由紀氏、英語をウェグミュラーあけみ氏がそれぞれ担当。両名とも関東の鉄道事業者では馴染みが薄いが、中矢氏は神戸新交通(ポートライナー)や広島高速交通(アストラムライン)など、ウェグミュラー氏はOsaka Metroや南海電鉄など関西の事業者でそれぞれ採用例がある。というわけで、何となく関西の私鉄に乗車している気分が味わえる・・・?

◆ ◆ ◆

それでは、実際の自動放送を聴いてみよう。放送のタイミングは主に始発駅停車中、駅発車後、駅到着前の3つ。このほかにスポット放送と呼ばれる注意啓蒙などの内容が任意のタイミングが流されることがある。

快特

【快特京急久里浜行】品川発車後

【快特京急久里浜行】京急蒲田到着前

前述の通り放送は駅発車後と駅到着前のものが用意されており、それぞれのタイミングで放送が行われる。主要駅発車後の放送では列車の種別行先の案内が含まれており、快特の場合は停車駅の案内が入る。快特の英語での案内が「KAITOKU Limitted Express」なのが面白いところ。

【快特京急久里浜行】京急川崎到着前

【快特京急久里浜行】京急川崎発車後

【快特京急久里浜行】横浜到着前

駅間距離が短い区間では発車後の放送がなく、到着前の放送のみとなる。それぞれの放送にスポット放送を追加して流す機能があり、これを用いて注意啓蒙の内容が合わせて流れることがある。

特 急

【特急三崎口行】品川始発

【特急三崎口行】青物横丁到着前

特急の品川→青物横丁も「まもなく〜」のみ。品川出発直後は行先種別のみを案内する始発放送を流している。なお、英語ではもちろん「TOKKYU Limited Express」である。

【特急三崎口行】横浜到着前

駅間距離が短いにもかかわらず案内する内容の多い区間では、収録された音声の一部を少し早口にすることで再生時間の短縮が図られている。再生時間に余裕のある快特との違いに注目。

【特急三崎口行】横浜発車後

下り特急で停車駅の案内が行われるのは横浜出発後が最初となる。

【特急印旛日本医大行】糀谷到着前

【特急印旛日本医大行】品川到着前

羽田空港発の列車では、横浜方面か品川方面かがしつこく案内される。

急行

【急行羽田空港行】京急蒲田到着前

【急行羽田空港行】糀谷到着前

【急行羽田空港行】大鳥居到着前

羽田空港行の電車はよく喋る。短い駅間に空港やフライトに関する案内を詰め込んでいる。

【急行羽田空港行】羽田空港第3ターミナル到着前

【急行羽田空港行】羽田空港第1・第2ターミナル到着前

羽田空港各駅到着前の放送ではターミナルの案内も行われる。航空会社名の入った具体的な案内だが、航空会社の名称やターミナル配置が変更された場合は内容を録り直すのだろうか。なお、乗務員によっては4ヶ国語の案内が選択されることもあるが、駅到着までに間に合わない。

普通

【普通浦賀行】北品川到着前

駅間距離の短い普通列車で流されるのは基本的に駅到着前の放送のみ。始発駅品川発車直後の放送も行先を言った後に流れるのは「まもなく〜」。

【普通浦賀行】大森海岸到着前

駅名と開くドアの方向のみの案内。最もシンプルなパターン。

【普通浦賀行】雑色到着前

主要駅や待避駅の次の区間の放送は種別行先の案内が入る。英語の「Welcome aboard.」がいい感じ。

【普通品川行】神奈川新町到着前

副本線があって列車によってドアの開く方向が変わる駅では予め開扉の方向を設定しておくことで、ドアの開く方向の案内が違和感なく放送に組み込まれる。

【普通品川行】品川到着前

終着駅の案内では「本日も京急線をご利用くださいましてありがとうございました」。

このほか、快特や特急では分割・併合を行う列車にも対応しているほか、ウィング号では放送の冒頭にチャイムが流れるようだ。自動放送の導入事例としてはかなりの後発となるが、その分だけ内容が洗練されており、当初より完成度の高さがうかがえるものとなっている。

  • 1)京成電鉄では当初Panasonic製のAndroid端末を使用していたが、最近になって端末が更新され、iPadが使われるようになった。
  • 京急
  • タグはありません

関連記事

京急線 さようならエアポート急行

さようなら、エアポート急行。11月25日に実施されたダイヤ改正で急行への名称変更に伴い運行を終了した京急線のエアポート急行。惜別企画として、約13年半にわたり運行されたエアポート急行を簡単に...

京急線 さようならエアポート急行
京急線 2023年11月25日ダイヤ改正 「急行」復活

京急線で急行が13年ぶりに復活。京急線では11月25日にダイヤ改正を実施した。同線では昨年にも大きなダイヤ改正があったため今回は小幅な変更が目立つ内容となっているが、その中でも大きな注目を集めた...

京急線 2023年11月25日ダイヤ改正 「急行」復活
京急電鉄 運賃改定を実施(2023年10月)

京急線、約28年ぶりに運賃改定を実施。10月1日、京急電鉄は京急全線において運賃改訂を実施した。消費税率の引き上げに伴う運賃値上げを除けば約28年ぶりの運賃改定となっている。どういった内容なのか...

京急電鉄 運賃改定を実施(2023年10月)
京急線 普通列車の走り方の変化

京急線の普通列車の走り方を見る。京急線で2022年11月26日に実施されたダイヤ改正。日中時間帯の運行パターンの刷新は、京急自ら「23年ぶりの大幅ダイヤ改正」と表現するほど大きなものであった...

京急線 普通列車の走り方の変化
京成線 タブレット端末を活用した自動放送始まる

京成線に自動放送がやってきた。3月29日より、京成線で自動放送の使用が始まった。対象となるのは従来より自動放送を実施している成田スカイアクセス線のアクセス特急を除く京成本線や千葉・千原線など...

京成線 タブレット端末を活用した自動放送始まる

最新記事

京成線 京成成田駅にイラスト入り駅名標が登場

京成成田駅にイラスト入りの駅名標が登場。京成線の京成成田駅にイラスト入りの駅名標がお目見えしている。登場したのは、3月末あるいは4月頭の模様。成田と言えば真言宗智山派の大本山のひとつ成田山新勝寺...

京成線 京成成田駅にイラスト入り駅名標が登場
北総7300形 臨時特急「ほくそう春まつり号」運転(2024年)

今年も春がやってきた。4月21日、北総鉄道が主催する「ほくそう春まつり」の開催に合わせて臨時特急「ほくそう春まつり号」が運転された。昨年、京成本線の八千代台始発として5年ぶりに運転された当列車...

北総7300形 臨時特急「ほくそう春まつり号」運転(2024年)
千葉シーサイドバス路線図 2024年4月1日版

当Webサイトでは、2023年3月の「千葉シーサイドバス路線図 2023年3月1日版」と題する記事にて千葉シーサイドバスの路線図を公開していたところであるが、約1年ぶりに改訂版を発行する。千葉...

千葉シーサイドバス路線図 2024年4月1日版
京成グループ 車両の動き(2023年度)

京成グループにおける2023年度の車両の動きをまとめてみよう。まずは京成。ここ数年は列車無線のデジタル化に伴う予備車の存在や2度にわたる脱線事故の影響などでイレギュラーな車両の動きが続いていたが...

京成グループ 車両の動き(2023年度)
北総7500形 「北総1期線開業45周年記念」ヘッドマーク

北総線開業45周年記念。北総鉄道では、3月上旬より7500形おいて「北総1期線開業45周年記念」ヘッドマークの掲出を行っている。表題のとおり北総1期線(新鎌ヶ谷〜小室)の開業45周年を記念した...

北総7500形 「北総1期線開業45周年記念」ヘッドマーク